連載 これで患者さんに説明できる。精神科薬の“薬理学的リクツ”・3
「抗精神病薬」その2 作用と副作用の発現
姫井 昭男
1,2
1大阪医科大学神経精神医学教室
2大阪精神医学研究所新阿武山クリニック
pp.102-114
発行日 2006年11月1日
Published Date 2006/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100325
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分子生物学という学問をご存じですか?生物学の一分野で、生物の生命活動や現象が化学的にどのように発現・制御されているかを解明する学問です。1962年にノーベル賞を受賞したJ.ワトソンという遺伝学者とF.クリックという生物学者の2人が、生物の遺伝情報を蓄えるDNAは二重らせん構造であることを突き止めたことを契機に、分子生物学の世界はそれまで解明できなかった生命活動・現象のなぞを次々と解き明かし、生物学自体の流れを大きく変えました。特にヒトの研究において、この20年程の間に新しく発見された生命現象を司る物質や、細胞間の情報伝達機構の解明にはなくてはならない技術である遺伝子クローニング法や遺伝子導入法は、このワトソンとクリックの発見がなければみつけられなかったでしょう。
この分子生物学がもたらしたものは、脳科学の世界にとっても絶大な意味がありました。というのも、精神活動は脳の生命活動そのもので、脳のマクロな解剖学的なことはわかっていてもさらに微細な分子レベルでの解明がほとんどできていなかったからです。今では高校生の生物学の教科書にも出てくるドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の詳細なはたらきがわかるようになったのも分子生物学の賜ものといっても過言ではないでしょう。
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