音楽でホッとひと息―現代人に贈る癒しの音楽(最終回)
―ブラームス―「後期ピアノ作品集」
竹重 敦
pp.913
発行日 1997年12月15日
Published Date 1997/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688902453
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ドイツ3大Bとしてバッハ,ベートーヴェンと並び称されるブラームス.いずれも甲乙つけ難い4つの偉大な交響曲を始め,その代表作には大作が目白押しだ.しかし代表作かどうかは別として,最も心魅かれ,愛する作品は何かと問われれば,私はいくつかの室内楽曲,無伴奏混声合唱のためのモテットと並んで,この余り知られていない晩年のピアノの小品集を選ぶことになる.私だけでなく案外そう感じている人が多いのではないか.
ブラームスは死を約5年後に控えた50代の最後に,立て続けにピアノのための小品集を作曲した.作品116から119までがそれで,数にして丁度20曲,それらはほとんどがインターメッツォ.すなわち間奏曲と名付けられている.大作指向だった彼が,晩年に至り小さなピアノ曲ばかりを集中的に作曲したのは極めて興味深いことだ.大作指向とはいっても,ブラームスは元来が内向的な作曲家なのである.内へ内へと向かおうとする性癖でありながら,形の上では外へ外へと大きく拡がる交響曲などの大作を創ることには少々無理があって,軋(きし)みというか,少なからぬ矛盾が生ずるのである.
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