特集 在宅における効果的な口腔ケアを目指して
機能的口腔ケアの実際
黒岩 恭子
1
,
鈴木 知子
1
,
小林 知子
1
,
大西 志津子
1
1村田歯科医院
pp.892-899
発行日 2002年11月15日
Published Date 2002/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901414
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「食べられる口づくり」を担う歯科の役割
ある内科クリニックからの依頼で,在宅往診に出かけた時のことをいまだに忘れることができません。その患者さんの口腔内は,腐敗した食物残渣の貯留庫のようで,分厚く層になったプラークがこびりついていて,歯牙はほとんど見えず舌苔がべったりと付着。唾液は粘稠度が強く,口臭も著しく,まず最初に口腔清掃を行なってからでなければ,診断・治療に取りかかれない状態でした。まるで,闇の中で手探りで行なうような診断・治療で,恐ろしく感じました。私は開業医で歯科医院の診療があるため,毎食後,歯磨きには出かけられないため,数日後に往診に行くと元の状態の口腔に逆戻りしていました。
往診のたびにこのような状況に遭遇するので,口腔内を常にきれいに保つには看護・介護に携わっている方々にお願いするしかないと切に思いました。理解を示していただくために,医院の休みの日に看護・介護の現場に出向き患者さんの口腔ケアの方法を手とり足とりして伝えたところ,発熱,唾液を嚥下した時や食事中のむせがなくなってQOLが向上し,患者さんとのコミュニケーションがとれるようになったことから,看護・介護が楽になったという声があがってきました。そのことが地域に広まり,私たちの歯科医院が出向かなくても口腔ケア・口腔リハビリを積極的にしてくれる仲間が増えてきました。
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