連載 介護することば 介護するからだ 細馬先生の観察日記・第55回
“失敗”と“しっぱい”
細馬 宏通
1
1滋賀県立大学人間文化学部
pp.156-157
発行日 2016年2月15日
Published Date 2016/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688200393
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ある研究会でベッド介助の場面を見せたときのこと。ベッドに仰向けになったおばあさんの位置が少し横にずれている。「ここで職員さんがちょっとしっぱいしておられるんですが」と説明したら、あとで別の研究者から「こういうちょっとした事例を“失敗”と呼ぶのはちょっと深刻過ぎるのではないか」という意見が出た。
じつは以前にも、まったく違う場所で似たようなことを経験している。あるジャズ演奏のライブの打ち上げで、「あのやりとりでちょっとトランペットの人がしっぱいしたみたいな感じになったのが、かえっておもしろいアドリブになってよかった」といった感想を言ったら、横に居た共演者に「“失敗”って言っちゃうとちょっときついかなあ」とやんわりたしなめられた。
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