書評
死亡直前と看取りのエビデンス
川越 正平
1
1あおぞら診療所
pp.153
発行日 2016年2月15日
Published Date 2016/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688200391
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緩和ケアの現場で取り扱う事象は「患者の苦痛」という主観であり、画像や数値の形で客観的にとらえることは難しい。さらに、ケアの対象者は亡くなってしまうことから、検証することもきわめて困難である。「まえがき」にあるように、「ターミナルケアに関する書籍のほとんどは経験則によるものであ」ることを鑑みた著者が、世界各地で蓄積されつつあるエビデンスを、今後「知らずに臨床実践を行うことは許されなくなる」と考え、執筆したのが本書である。さまざまな命題について、「エビデンス」を軸に論を進める構成は新しく、読み進むうちにどんどん引き込まれる。
「がん患者の30%は急変して死亡する」「ルーチンのバイタル測定は死亡を予測することには役立たない」「医師は患者の生命予後を楽観的に予測する傾向がある」などのエビデンスは、臨床現場において明日から活かせる知見である。今後の病態変化を予測して伝えることにより、患者は少しでも安心して過ごすことができる。予期しない時期に患者を失うことは、家族のうつ病や複雑性悲嘆の原因になるという知見を踏まえ、医療者は生命予後予測の技術を身につけておく必要がある。
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