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求められるサービス選択への支援
介護保険制度は,多様な事業者によるサービス提供があってはじめて成り立つ制度です。介護保険のサービスに限らず,おおよそサービスというものは,通常の商品と異なり,手にとって比較し選ぶことのできない特性をもっています。介護保険は,利用者自らがサービスを選択できるようにした画期的な制度です。しかも,サービスは市場を通じて購入されるようになりました。このことは,これまで,行政の措置という形でサービスの受益を受けていた時代から,利用者は消費者として,サービス財の効用を購入する時代へと転換していることを意味します。
千代田区では,介護保険が発足した平成12年5月から,介護保険の利用実態をアンケート調査しました。その中で,特に多かったのは,「一体,どのサービス事業者を選んで良いか分からない」,「介護サービスの質が心配である」という声で,約3割を占めていました。
千代田区では,介護認定を受けられた方には,「ケアマネジャー・サービス事業者リスト」を配布しています。このリストは,住所や連絡先だけ載せた電話帳的なものではなく,営業時間,人員,サービス事業者からのコメントなども掲載し,サービス選択に役立つよう工夫をしています。
それにもかかわらず,こうした多くの声をいただいたことに,あらためて,介護保険が持つ福祉の構造改革の影響を感じざるを得ません。これからの時代は,サービスの提供者が,そのサービスの質や内容を明らかにし,利用者が適切にサービス選択をできるようにしていく仕組みづくりが求められています。そして,こうした取り組みを通じて,良い意味での,競い合いによる健全な介護保険サービスの発展につなげていく必要があります。
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