特集 エラーを防止できるチーム体制めざして
チームによるエラー防止に向けて―チームエラーの概念から考える
佐相 邦英
1
1電力中央研究所ヒューマンファクター研究センター
pp.826-829
発行日 2002年11月10日
Published Date 2002/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901535
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はじめに
1999年9月,茨城県東海村のウラン燃料加工工場で,わが国初の臨界事故註)が発生した。この事故では,事故当時,工場内で作業していた作業員らの行動上の問題よりも,作業効率優先の職場風土,安全を疎かにした組織運営など,組織文化に関わる問題が注目された。筆者も同様に考えるが,作業現場のレベルでこの事故は防げなかったのであろうか。すなわち,作業員が手順書には記載されていない別容器に原料を入れようとした判断ミスはあったが,この判断を行動に移す(実際に容器に原料を入れる)前に,誰かが阻止すればこの事故は起こらなかったであろう。この場合の誰かとは,作業員の上司で現場を巡回していた職場長でもあり,また,別容器を使うことの安全性を聞かれた国家資格をもつ人物であったと考えることはできないであろうか。
多くの場合,一人の人間が仕事の全てを任されるのではなく,複数の人間が関わりあって仕事をしている。原子力プラントでも,航空機でも,また医療の現場でも程度の差はあれ,複数の人間のチームワークによって仕事が行なわれていると言える。一般に,チームで行動することにより,仕事の手分けはもちろん,お互いの不得手・ミスをカバーし合えば,ヒューマンエラーはなくなると考えられる。それにもかかわらずヒューマンエラーが発生し,設備や患者に対して多大な影響を及ぼす場合がある。
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