連載 人が成長する組織づくりの可能性を探る—海外の文献・事情をひも解きながら・3
『ヒューマノクラシー』の意図するもの—先進事例から著者が訴えようとしていること
嶋田 至
1,2
,
西川 耕平
2,3
1合同会社チーム経営
2OD Association in Japan(ODAJ)
3甲南大学 全学共通教育センター
pp.240-244
発行日 2023年3月10日
Published Date 2023/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686202348
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今回は,ゲイリー・ハメルとミッシェル・ザニーニの共著『ヒューマノクラシー』について,ビューロクラシー(官僚制)の弊害を乗り越えたニューコア(Nucor)社とハイアール(Haier)社の事例を説明し,著者が私たちにどんなことを主張しているのかを解説したいと思います。
ニューコア社とハイアール社は,ともに大企業ですから,著者の言うビューロクラシーの特徴,階層化(stratification),専門化(specialization),公式化(formalization),ルーチン化(routinization)が,組織の運営原理となり,多くの組織的な力,つまり再生する力,創造する力,職務に没頭する力などを,むしばむはずです。しかし,実態は違いました。むしろ,リソース・ベースド・ビューの特徴である,ダイナミック・ケイパビリティ(変化に果断に対応できるよう組織資源を再編成する力)が,ビューロクラシーのよい点と組み合わさった,まさに新しい運営原理に基づく組織でありました。そこではスタートアップ企業のように,1人ひとりの社員が発揮する力と知恵を集めて,全体の成果に結びつく組織運営がされているため,これをヒューマノクラシーとして,この本の論理が組み立てられています註1。
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