連載 今に生きるヒトコト・6
「安心して眠れてたのに……。本当にありがとう」
中島 美津子
1
1東京警察病院看護部
pp.389-391
発行日 2009年6月10日
Published Date 2009/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101470
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「起こさないように起こさないように……,え~っと,これはここにつながっていて……」,寝息の音調が変わらないのを耳で確認しながら,滴下筒から輸液ルートの先端挿入部までを懐中電灯で照らしながら確認。「よし,ちゃんと落ちてるし,三括もゆるんでいないし,挿入部も問題なし!」。付き添って寝ているお母さんを起こさないように,そっとスタッフステーションに戻ろうとした時でした。
「中島さん。今日は中島さんが最後の夜勤だって聞いて」。振り向くと,206号室と207号室のお母さんたちがいつの間にか廊下に集まっていたのです。狐に化かされたような顔をしていると,その中でもっとも入院の長かった患児のお母さんが,花束を手に「中島さんが夜勤って聞いた時はいつも安心して,夜眠れてたのに……。本当にありがとう」。勤務中であることを忘れ,あふれる涙とともに花束を受け取り,お母さんたちと握手をしたことが,いまだに昨日のことのように思い出されます。
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