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はじめに
平成30年度からの科学研究費助成事業(科研費)審査システムの改革は,その背景に日本の基礎科学力の揺らぎがあるとされ,「日本が将来にわたって卓越した研究成果を持続的に生み出し続け,世界の中で存在感を保持できるのか」が問われている(文部科学省研究振興局学術研究助成課,2017)。このような情勢から,科学技術・学術審議会では,学術研究の現代的要請として科研費の抜本的改革を提言し,2年半をかけて“科研費構造の見直し”が行なわれた。知のブレークスルーをめざす半世紀ぶりの大きな改革であるが,科学研究に対する時代の大きなうねりの中で,はたして看護研究をどのように位置づけ発展させていくことができるのか。これを契機に国際競争力,学際性や若手研究者の育成をキーワーズとして,すべての学問領域の中での看護研究の存在意義を改めて見直す機会になればと思う。特に,日本の学術研究を主導する大学数780校のうち,看護系は3割の263校に及んでいる(平成29年度)(日本看護協会出版会編,2017)。また,科研費の応募資格登録者総数は約11万6000人であるが,そのうち看護者(保健師,助産師,看護師の有資格者)はその1割以上と推計される(平成26年度)(日本学術振興会研究事業部,2017)。これらのデータをみると,看護における科学研究の成果が大いに期待されることは明らかであろう。
本稿では,日本学術振興会(以下,学振)の学術システム研究センターにおいて医歯薬班の専門研究員である立場から,同センターの協力を得て科研費制度改革の概要の資料を紹介するとともに〔文部科学省研究振興局学術研究助成課(2017).http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/1362786.htm〕,看護における科研費応募の現状と今後の課題について私見をまじえて論じたい。
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