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はじめに
2014年の日本人の平均寿命は男性80.50歳,女性86.83歳となり,いずれも過去最高を更新した(厚生労働省,2014)。65歳以上の高齢者人口も,2015年2月1日時点で3332万5000人,総人口の26.2%と,人口および割合ともに過去最高を更新し続けており(総務省統計局,2015),それに伴い要介護高齢者も増加を続けている(厚生労働省,2015)。
これまで,高齢者施設における皮膚疾患は褥瘡や疥癬を除きあまり重要視されていなかった。実際,厚生労働省も施設入所高齢者における皮膚疾患有病率をわずか数%と試算してきた(幸野,2007)。ところが,高齢者施設の入所者の70.1%は何らかの皮膚疾患を有していることが日本臨床皮膚科医会の訪問調査で明らかにされた(今井ら,2004)。これは点有病率であり,期間有病率はさらに高いと推定される。
高齢者の皮膚疾患で多いのは,真菌症および湿疹・皮膚炎である(今井ら,2004)。高齢者の場合,生理機能の低下により症状が遷延化・難治化しやすくなり,ごく普通にみられる湿疹・皮膚炎でもその多くは痒みを伴い,活動低下,食欲低下,睡眠障害など,QOLの著しい低下を招く(矢口,2010;小林,2012)。要介護高齢者の増加,さらには高齢者施設への入居者が増加している現状を鑑みると,皮膚疾患の予防および治療は極めて重要な課題と考えられる。
本稿では,皮膚の機能や高齢者の皮膚の特徴といった基礎的事項や疫学についてまとめた上で,高齢者,特に施設入居者における皮膚疾患への対応という観点から,主に真菌症および湿疹・皮膚炎の病態と治療について,筆者らの研究の結果を含めて概説する。
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