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背景:おむつを当てている部位に生じる紅斑,丘疹,鱗屑,びらんなどの症状を一括して「おむつ皮膚炎」と呼ぶことが多いが,これは,湿疹・皮膚炎以外に,真菌感染症などを含んだ概念である。高齢者のいわゆる「おむつ皮膚炎」(以下,おむつ皮膚炎)は高齢者介護において問題となるが,確立した対応方法はない。われわれは先行する疫学調査において,おむつ皮膚炎における真菌感染症が予想外に少ないことを見いだし,ステロイド外用でその多くが改善する可能性を考えた。
目的:おむつ皮膚炎に対して,最初にステロイド外用薬を使用する治療アルゴリズムを考案した。その有用性を検証するために,介護保険施設入所者のおむつ皮膚炎に対して治療アルゴリズムに従った治療を実施し,その有用性を検討する。
方法:研究デザインは一群事前事後テストデザインである。介護保険施設に入所する高齢者のおむつ皮膚炎にステロイド外用薬(混合死菌浮遊液/ヒドロコルチゾン配合剤)を最長3週間塗布した。主要有効性評価項目は総合スコアと有効性判定とした。
結果:高齢者45例のおむつ皮膚炎にステロイド外用薬を塗布したところ総合スコアは速やかに改善し,1週後には9例(20.0%),3週後には全体で13例(28.9%)が治癒した。この改善効果は治療前の重症度によらず認められた。一方,悪化した症例はいずれの判定時期においても10%前後と少なく,直接鏡検での真菌検出例も認められなかった。今回の試験結果から,治療アルゴリズムの有用性が明らかになった。
結論:われわれが考案したおむつ皮膚炎の治療アルゴリズムに従って治療を行なえば,大部分の症例では症状改善が期待できる。これにより介護保険施設入所者のQuality of Lifeは改善され,介護者の負担も軽減されると考える。
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