連載 助産師のための新生児ケア集中講座・9
新生児ケアにおける倫理とチーム医療
仁志田 博司
1
1東京女子医科大学
pp.1126-1132
発行日 2010年12月25日
Published Date 2010/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101783
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
なぜ新生児医療において生命倫理が重要となってきたか
これまで妊娠分娩は生理的な現象であり,その過程で新生児が生まれる時にある確率で亡くなるのは仕方がないと考えられていた。筆者が生まれた1942年頃の乳児死亡率(出生1000当たりの1歳までの死亡数)は80以上であり,その半数以上が新生児死亡(生後28日以内の死亡)であった。このように多くの新生児が出生後間もなく亡くなっていたので,当時は新生児の生命倫理などを論じることはほとんどなかったのである。
1970年代になって,医療の進歩に伴い新生児も成人同様に医療の恩恵を受けることが可能となりNICUが普及しはじめ,これまで助からなかった未熟児や重症児が救命されるようになると,どの程度未熟な児,どのくらい奇形の児,どのくらい予後が悪い児まで治療をすべきかが考えられるようになった。その背景には,医学・医療の進歩以上に「新生児でも成人と同じ人間である」という認識が受け入れられるようになったことを考えなければならない。
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.