連載 本のなる樹・5
食べ物でいろいろ考える
さくま ゆみこ
pp.448-449
発行日 2009年5月25日
Published Date 2009/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101440
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- 文献概要
最近は,スーパーに行けば冬でもトマトやイチゴが並んでいるし,夏でもほうれん草やねぎが並んでいるというふうで,何が旬の食べ物なのかよくわからなくなってきた。魚というと切り身しか思い浮かばない子どももいると聞く。それに,食べる,ということは,ほかの植物や動物の命をいただくということなのだが,それをともすると現代人は忘れてしまい,どこでおいしい食べ物が手に入るかとか,どのレストランがおいしいか,などのグルメ情報ばかりに走ってしまう。そんなことを考えながら,自省もこめて,今月はグルメ本ではなく,食べ物の基本を考える本を選んでみた。
最初は,チェコのかわいい絵本『りんごのき』を紹介しよう。この絵本の主人公はマルチンという名前の小さな男の子。最初の場面は冬で,雪におおわれた庭をお母さんとマルチンがながめている。その庭には小さなリンゴの木がある。マルチン一家は,その木にウサギよけの金網を巻いたり,水をやったり,虫を退治したりして,大事にしている。小さい木は,春になると花を咲かせ,夏になるとたった2つ実をつけたものの,そのうちの1つは嵐で落ちてしまう。そして秋になると,たった1つだけ赤く実ったリンゴをマルチンがぴょーんと飛び上がってもぎとる。
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