連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・50
どこに行けば,「安全」なのか
冨田 江里子
1
1St. Barbanas Maternity Clinic
pp.474-475
発行日 2008年5月25日
Published Date 2008/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101230
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「クリニックで産ませてほしい」
「何があっても任せる,(子どもの生死も)すべては神様の意思だからここで産ませて欲しい」。この言葉を2度も同じ母親から言われた。1回目は家族にその覚悟があっても責任が負えないと産婦を説得し,病院へ転送した。しかし即金で高額な医療費が支払えないという理由から,病院で児への治療は寸断され,児は数時間後に死亡した。
今回はその産婦の妹で,おそらく低置胎盤だ。予定日近くに突然の出血があったが,私が診たときにはすでに止血しており,腟内にはわずかな茶色の出血が残る程度だった。トラウベに響く心音も良好だ。「新しい出血はないね。どんな感じで出血したの?」。ネガティブ因子を探して病院へ行くように説得したい私のこころを見抜いたように,産婦の実母が冒頭の言葉を私に投げた。
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