調査報告
組織間の事業統合による広域連携の成立要件―保健所が取り組んだ協議会設立の過程から
小路 ますみ
1
,
久保山 留美子
2
,
石田 さゆり
3
,
宇治 光治
4
1福岡県立大学看護学部看護学科
2福岡県朝倉保健福祉環境事務所
3福岡県筑紫保健福祉環境事務所
4福岡県粕屋保健福祉環境事務所
pp.152-159
発行日 2004年2月1日
Published Date 2004/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100442
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■要旨
保健所が,地域の第一線で働く保健・医療・福祉に関わる人たちの要望に応え,広域的な連携体制づくりを行った活動を分析し,その成立要件を提示した。
対象は福岡県I地区の平成10年4月~平成11年3月までの保健所・教育行政双方が抱える連携事業を一本化し,協働による事業展開を図る協議会の設立に取り組んだI保健所の活動事例である。データの収集・分析にはKJ法を用いた。
結果,組織間の事業統合による広域連携の成立要件は,①変革のニーズ,②協働のニーズ,③鍵を握る共同責任者の確保,④体制づくり,⑤行政の枠(守備範囲)を超えた連携の認識,⑥組織間の事業統合であると考えられた。
組織間の事業統合による広域連携は,関係機関・団体のそれぞれが抱える守備範囲でとらえる「連携」の概念を打破し,他機関・団体との相互に自律的な「協働関係」にあることを認識したとき,はじめて成立するものと考える。
まずは,関係機関・団体および担当者の「変革のニーズ」を鋭敏にとらえ,組織的対応の必要性を認識し,行動化することが先決と考える。「鍵を握る共同責任者の確保」「体制づくり」は,メンバーそれぞれの自律性と協働の認識を高め,行政枠(守備範囲)の「打破」を導く醸成の要件として重要である。
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