病院の中の学校/小児科教育係の経験
病院中の協力のおかげ
北川 絢子
1
1国立中野療養所
pp.46
発行日 1964年8月1日
Published Date 1964/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905338
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この4日以来,療養所の正門に「江古田小学校,第七中学校分教室」と書かれた,まだ木の香も新しい標札が掲げられ,道行く人びとの目をとどめている。ここを通る度に私はほんとうに心からよかったと思わずにはいられない。そしてそれ以上に子どもたちが喜んでいる姿を想像し,自ら微笑がわいてくる。多くの人びとの努力が実を結んで,従来の寺子屋教室から,都内では初めての特殊学級として,この病院の中の分校は誕生いたしました。私たち,看護婦先生にかわって,立派な資格を持ち経験豊かな新任の先生を得,療養をしながら一般児童と変わりなく数育を受けることができるようになったことは,とかく暗い影を持たざるをえなかった児童にとって,どんなに将来に希望の光がさしこんだことだろう。
昨年の4月に総婦長さんから呼ばれ,内心,何のお説教かとドキドキしていたのに,相馬さんに手伝って英語を受げ持ってほしいといわれ,あまり突然のことに,果してこの大任が成し遂げられるものかと考えてしまった。もちろん,こういった経験は初めてのことで,慶応大学の通信教育を受けておりますものの,実際には,中学,高校で基礎教育をやってきただけに過ぎず,他科目に比して,わずかに英語がよかっただけで,勉学途上でもあり,むしろ,こちらが教わりたいくらい。
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