連載 南島詩人一人舞台・8
オンリーワン
平田 大一
pp.588-589
発行日 1998年8月25日
Published Date 1998/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901880
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「この度、T銀行を円満退社し、沖縄アクターズスクールに転職いたしました。今後は、戦争の傷跡と基地の重圧の生々しいこの沖縄から、エンターテイメントで沸き返る新しい街を創造すべく、専心努力する所存でございます」──突然の葉書は、十年ぶりの友人、森木君からのものであった。東京出身、早稲田大学卒業後に都内の銀行へ入社、将来を嘱望されたエリートコースまっしぐらのはずであったその彼が、全くの新天地・沖縄に単身で引っ越してきたという。それもなんと、安室奈美恵やSPEEDなどを世に送り出した、あの沖縄アクターズスクール校長のマキノ正幸氏のもとへの就職だという。
那覇での公演が入り、沖縄本島へ渡るその日、僕は森木君に連絡を取ることにした。受話器の向こうの彼は「大ちゃん、久しぶり」、高いテンションの声で「毎日が楽しいんだ」と元気に笑った。「えッ!?那覇に来るの?よしッ、飲もう飲もう」と話は決まったものの、結局お互いの仕事を済ませて再会の乾杯をした時にはすでに夜中の十二時をまわっていた。
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