連載 「進学コース」教育の意味・6
卒業が看護のスタート地点
柏木 とき江
1
1筑波記念病院看護部
pp.210-213
発行日 1998年3月25日
Published Date 1998/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901798
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役職から育てられること
「器が人をつくる」これは私にICUの主任の辞令がおりた時の総婦長からの言葉である.進学コースである国立療養所東京病院附属看護学校を卒業し,大学附属病院に復職して3年目のことで,突然の話に,とても自分には荷が重すぎると答えた.しかし,総婦長は次のように言われた.「今あなたに主任としての仕事が100%できるとは思ってはいません.人間はその器の大きさによって大きくなります.たとえば,コップに水を入れたばかりは水面が揺れ動いて落ち着きませんが,時間が経つにつれて,やがて,水面は動かなくなり,器の中にぴったりと収まります.これと同じように,時間が経つにつれて,あなたも主任としての役割ができるようになります.いつまでも一看護婦の立場でいたら,役割を通しての視点で見ることは難しいのです.これは年齢を重ねれば得られるものではありません.チャンスを生かすのはあなた次第だと思います」と.
看護学校卒業後3年も経っていない段階で主任に任命されるとは,今の時代では不思議に思うかも知れない.しかし,その当時は全国的に見て,看護婦と准看護婦との数の割合はほぼ半々であり,大学附属病院とはいっても,看護婦よりも准看護婦の割合が多かった.看護学校卒業後3年も満たない段階で主任を任命されたことは,病院の看護面が徐々に変化しようとする兆しの表れであり,質的な向上を主任という業務の上に託されたのだと考えた.
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