連載 リズムとからだ 「うまくいく」と「うまくいかない」の謎・2
吃音という謎
伊藤 亜紗
1
1東京工業大学リベラルアーツセンター
pp.380-383
発行日 2017年5月25日
Published Date 2017/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200745
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こんにちは,伊藤亜紗です。この連載では,「リズム」という観点から私たちのからだについて考えていきます。リズムと言っても「体内時計」や「生理周期」のような身体内部のバイオリズムのことではありません。もちろんどこかではそういったものとも関係しているのでしょうが,注目したいのは,あくまで目に見える動きに現われるリズムです。私たちが,からだの全体,あるいはその一部を動かすその仕組みに注目します。
この連載で最初に扱いたいのは,「吃音のからだ」です。話すときに「たたたた」と同じ音を繰り返してしまったり,最初の音に詰まってしまったりする,あの「どもり」です。吃音は発声器官の運動にかかわる障害ですから,「歩行」や「料理」のような運動にくらべると,動きとしては決して大きくはありません。けれども吃音は,まさに「リズムに乗る」ことにかかわる障害です。障害が「生きづらさ」であるとすれば,まさにリズムの力で「生きづらさ」を「生きることの気安さ」へと接続するところに吃音があるといえます。
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