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【主な論文】「成功への戦略:国家試験合格が危うい生徒を改善するクライシス・マネジメント・モデル」 より
各看護学校の教育の質と成果を判断する方法に,卒業生の看護国家試験の合格率の比較があります。米国の看護国家試験は,看護学校の卒業生のみ受験資格が与えられ,卒業見込み者では受験資格がありません。合格率が学校の評価となるため,卒業生の合格率を伸ばそうと,卒業試験として国家試験の模擬試験を行い,合格点に達しないと卒業資格を与えない看護学校が多数あります。
今号のJNEで,このような卒業試験の段階で,国家試験に不合格になりそうな生徒たちを前もって判断し,介入することによって,卒業後の国家試験に一発合格させるためのモデルと実例が紹介されています。卒業試験に4回以上落ちた13人の生徒に介入されたこのモデルで興味深い点は,この生徒たちの生活環境や精神面などホリスティックな視点で作成されていることです。例えば,卒業試験に落ちたので国家試験も落ちるのではないかと,落ち込ませたりやる気をなくさせたりし,返って悪影響を与えないようにするには,どのような介入が必要か。知識を無理やりつめ込んだり,受かるまで何度も挑戦させたり,居残り勉強をさせたりするのではなく,教員が生徒たちの低くなった自尊心や自信を取り戻すことに力を入れました。その対処法として,生徒たち自身に,自分たちの弱点や改善が必要な点を見つけさせ,自分たちで目標を明確にさせ,個人にあったペースで勉強を進めさせました。その一方で教員たちは,キャンパス内や看護学部の教員が提供できる情報やリソースなどから生徒たちの個別の勉強プランに合うものを探し出したり,積極的に生徒との時間を取り,勉強の進み具合だけでなく,家族や友達関係の相談に乗ったり,励まし,成果を称えたりしました。テスト不安(test anxiety=極度の緊張や失敗する恐れで,勉強したことを忘れてしまう)を引き起こす生徒たちには,カウンセラーの資格をもった教員が受験の仕方(test taking)指導もしました。この介入の結果,13人中12人が国家試験に一発合格し,この大学全体の合格率は約95%でした。全国平均が約80%なので,この大学は平均を大きく上回る結果となりました。
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