連載 感染症 Up to Date・58
第13回国際AIDS会議での話題
簑輪 眞澄
1
1国立公衆衛生院疫学部
pp.68-71
発行日 2001年1月10日
Published Date 2001/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902383
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はじめに
第13回国際AIDS会議は,昨年(2000年)7月9〜14日に南アフリカ共和国ダーバン市において開催された。参加者数は1万2700名と発表されており,日本からも86名が参加した。ダーバンはリゾート地で,南半球の冬であるこの時期はオフシーズンであるが,これだけの参加者を宿泊させる能力はないらしく,日本からの参加者の多くは片道2時間を超える通勤を余儀なくされたとのことであった(もっとも私は,日本でも毎日片道2時間の通勤をしているけどね)。幸いわれわれ4人の判行は,会場からレンタカーで10分くらいのところにある,プライベートホテルに宿泊することができた。
また,この国は治安が悪いという評判のため参加を尻込みする日本人もいたが,事実開会式の日だけで日本人を含む3人の出席者が強盗やかっぱらいに遭ったことが報道された。その背景には,1994年にアパルトヘイトが廃止されて,黒人も参政権を持つようになったものの,経済的な実権は白人が握っており,貧富の格差が大きいことがあげられよう。
会議のテーマは「沈黙を破れBreak the Silence」であり,その沈黙とは不平等,不活発,遅延,および人間の尊厳に対する侮辱(表1)に関するものであるとされている。わが国ではどうなのだろうと反省する材料になろう。
私の場合,国立公衆衛生院におけるAIDS対策研修を担当している立場から,主として保健所においてAIDS予防のために何をなすべきか,あるいは何ができるのかを考えながら聞いていた。その中から私が関心を持ったいくつかの話題について,当日の発表に加えて,配布資料などを参考にしながら稿を進めることとする。
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