発言席
健やかな老後は入れ歯磨きから
寺岡 加代
1
1東京医科歯科大学・予防歯科
pp.757
発行日 1991年10月10日
Published Date 1991/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900315
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当然のことながら,歯がなくなれば“歯磨き”はしなくてよい。ところがそうなると,今度はもっと厄介な“入れ歯磨き”が待っている。数本でも歯が残っていれば,入れ歯と自分の歯の両方を磨かねばならない。さらに問題なのは,入れ歯を必要とする年代は,手先は不器用,細いものは見づらい,何をするのも憶劫という年頃でもある。まだなんとか本人が磨けるうちはいいとして,他人の助けが必要となるとなおさら厄介である。
まだ私が歯学部の学生だった頃,家に歯牙模型を持ち帰り,机の上に置き放しにしていたら,家族から早く片付けるように言われた。ずらっと並んだ歯型は何んとも気味が悪いらしい。それと同じことが入れ歯にもいえるのかもしれない。まして他人の口から取り出した入れ歯は,唾液でぬるぬるしているし,食べかすがついていたりすると,とても素手で触る気にはなれないだろう。排泄のお世話とはまたちがった苦痛が伴う。
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