グラフ
地盤沈下という公害
大里 和朗
pp.47-49
発行日 1972年10月10日
Published Date 1972/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205155
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ひげがのびるように
髪の毛やひげが毎日少しずつのびていくように,そして昨朝そったひげがけさまでにどれだけのびていた,というような結果は必ずわかっても,いま自分のあごひげが秒速数ミリミクロンで断え間なくのびつづけているという微かなその運動は,自分自身のどんな感覚でもけっして認知することができないのと同じように,現在,東京23区の50%の地域で,足元の地面が,直接にはけっしてだれにも気づかれぬほどゆっくりと,しかし確実に沈みつづけている。
地盤沈下という現象はすでに一部では大正初期から観測され,ある水準点では50年間に約4.5メートルの沈下をみた。もっとも低い所でAP1.5メートル(APとはAraleawa Paleの略で,東京湾の平均潮位はAP1.1メートルである),つまり東京湾の水位より2.6メートルも低い。
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