スポット
いかほど薬を飲んでも
小坂 英世
1
1小坂診療所精神科
pp.54
発行日 1970年9月10日
Published Date 1970/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204755
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精神分裂病患者の治療においてクスリは主役のように扱われている。医師は服薬の継続を強調し,保健婦は服薬を勧奨する。それを受けて,家族も服薬の管理につとめる。それでは,そのように服薬を励行するだけで,精神分裂症はよくなるのであろうか。再発しないのであろうか。
姉と2人ぐらしであるAさんは熟練工である。最近,職場復帰した。工場側は喜んでむかえ入れた。かれも喜んで勤務し始めた。順調に約2カ月がすぎた。ある朝,工場から姉のところに電話がかかってきた。いつもとまったく様子がちがう,仕事を放り出して裏の空地に出て空をながめている,声をかけてもそのままだ,仕事にもならないし,あきらかに病気が悪くなっているようだから帰宅させる,しばらく静養させるように,とのことだった。
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