ほんだな
—鶴田 正一 著—事故の心理—交通環境と人間の行動特性,神経疾患患者の看護,保健室の仕事
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pp.64-65
発行日 1968年7月10日
Published Date 1968/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204231
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交通事故はなぜ起るか
最近では大通りを歩いていると,追突事故などは日常茶飯事として目のあたりにするし大型旅客機や鉄道の大事故も頻度を増したように思える。それどころか,多くの人が,少なくとも自動車に関して自ら多少共事故の経験を持っているというのが実情である。ところが,われわれの関心のレベルは,他人の事故には「不注意」の一語,自分の事故には「注意」の一語で行き詰ってしまい,具体的にさらに深く考えたり分析したりできないまま,もし事故の経験ある場合には,「注意していたんだけれど……」という漠然とした割り切れなさを心中に抱いて過ごしてしまうのが普通である。
これに対して「事故の心理」は,"不注意"という語は事故に対する煙幕のようなもので,その背後にひそむ真因をかくしてしまうといわれる」として,交通事故の"真因"を心理的行動特性に求め,幾つかの鉄道の大事故を中心に著者のテーゼを実証しながら,事故がむしろ「起るべくして起っている」という点を印象強く語ってくれる。いうならば,この本の興味は,「注意していたんでしょうけれど,それでもこれこれの心理現象のために,起らざるを得なかったんですよ。」と,割り切れなさにピタリと応答してくれる所に根ざしているといえよう。
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