Medical hi-lite
季節病カレンダー
籾山 政子
1
1気象研究所
pp.46-47
発行日 1963年12月10日
Published Date 1963/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202996
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季節病カレンダーは時代とともに変わる
日本の季節病カレンダーを歴史的に,明治,大正,昭和初期,戦後,現代と5つの時期にわたってながめてみると,その変遷の姿はきわめてあざやかである(第1図).明治時代はほとんどの病気による死亡が夏期に集中して,いわば"夏期集中"の姿を示していた.しかも心臓の疾患,脳出血(中枢神経系の血管損傷),老衰などの成人病は夏と冬の2つの山を示していた,ガンも夏に明白な流行期があった.そして,肺炎,腸炎,結核などの死亡率がきわめて高く,人口10万に対して200人以上も死亡していた.大正時代は明治時代と大差はないが,心臓の疾患,脳出血の夏の流行期が大部短かくなり,しかもその時期が夏より秋によってきた.死亡率をみても,明治に高かった肺炎,腸炎,結核はいぜんとして最高の値を示している.
しかし,昭和の初期になると,カレンダーの姿は大分変わってきた.最も特徴的なのは成人病の流行期が今まで2つみられたのが,夏が消滅しで冬にだけ残った事実である.さらに昭和も戦後になるとカレンダーはまったく変わって,夏に流行期を示したものは,赤痢と腸炎だけを残してあとは全部冬にきて,夏期集中から冬期集中に変わってしまった.従来常識的に夏型の疾病と考えられていた結核や脚気も冬型になっている.また今まで,3時期にわたって夏に流行期を示したガンは,10,11月を中心に秋に移行してきている.
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