病態生理講座
低血圧の病態生理
伊東 貞三
1
1東大医学部・田坂内科
pp.67-69
発行日 1961年8月10日
Published Date 1961/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202393
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はじめに
最近,心臓血管系の各種疾患は成人病の主要の地位を占め,過去における伝染性疾患にとつて代わるようになつてきたことは,直接患者に接する医師および看護,保健婦の認識する所であるが,その大部分のものは壮年,老年に見られる本態性高血圧症である.そしてわれわれは高血圧症に就て知ろうとする場合に,比較的手近かに,そして数多くの著書を店頭に見付けることができ,また終戦前後より発展して来た各種の薬物のおかげで,比較的早期に,そして容易に血圧を降下せしめ,患者の自覚症を取り去り,精神的にも安心感を与えることができるようになつてきた.しかしながら,循環器疾患患者の内でその占める割合が僅かではあるが非常に多くの愁訴を有し,そしてまた,治療が比較的困難である低血圧症が存在することを忘れてはならない.すなわち,この低血圧症こそ,実際に患者に接するわれわれにとつて,最も"やつかい"な存在なのである.今回,この低血圧症について少し述べてみたいと思う.
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