社会の窓
学校保健法と精薄児/集団就職からの脱落事件
阿部 幸男
1
1読売新聞社婦人部
pp.38-39
発行日 1959年6月10日
Published Date 1959/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201892
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昨年4月に公布された学校保健法に基いて,今年の就学児童には入学前に健康診断が行われた.その結果に基いて治療の勧告,必要な助言,修学猶予または免除,もしくは盲,ろう,養護学校への就学に関して指導を行うことが義務づけられたのだが,ここで問題になつたのが,健康診断の一部として実施された知能検査である.
この知能検査は学校の集団教育についてゆけない知能指数75以下の精薄児と呼ばれる子どもたちを見出すのが目的である.従つて,見出された精薄児の対策が当然伴わなければならないはずなのに,その方のお膳立ては全然といってよいほど出来ていないからである。全国の精薄児は学齢児童約1800万人の4.5%に当る84万人もいるのに,それらを受入れる養護学校或は特殊学級の数は極めて少く,そこで教育を受けている者は僅か2%の1万5千人前後に過ぎない有様でいまだに義務制にもなつていない.これをすでに一応義務制が完成し,施設や教員も整つて盲41.3%,ろう70.8%の就学率をみている盲学校,ろう学校の場合と比較してみると,いかにおくれているかは明白である.
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