今月におくる言葉
花いっぱいに
pp.9
発行日 1955年8月10日
Published Date 1955/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200994
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春のおそい北の国,礼幌は東京よりやく1カ月おくれの今,花の盛りで美しい。まず,名物のアカシヤが,あの鈴のような愛らしい花の房を風にそよがせている。札幌のアカシヤは,白い花ばかりで,ピンクはみられないが,甘い香りを吹く風にことよせて道ゆく人を思わず仰向けさせる.次いでリラの花,恋の花,ライラックは,ロマンチツクなうす紫色の大型の花の房を,ハート型の緑の葉の間からのぞかせて,花はみえなくても,その在り家を,それとわからせている.アカシヤやライラックの様に大きな木でない草花の類も,今が真盛りで,のぼり藤,シヤクヤク,ナデシコ,アヤメ,花菖蒲,石竹デージーと,春の花と,初夏の花とが一緒になつて,どこもここも花にうずもれている感じである.
新しくしつらえられた札幌神社の参詣道路の入口にある西洋草花の花壇は,モダーンなその飾りつけが,夜間も明るく照明されて,東京の日比谷公園のお花畑を想い出させる.札幌の町を視歩いてみて眼をひいたものに,可愛いお花の箱がある.恰度,リンゴ箱を縦に半分にして,其の周囲に小さいサクをつけ,真白いペンキをぬつてある.この箱の中は,赤いデージーや黄色い夏菊,紫のみやこわすれ,又は白い小さいカーネーシヨンなど思い思いの花が植えられていて,而もこの箱が一軒一軒の店の入口に置れている。
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