講座
お雜煮の科學
近藤 とし子
pp.19-23
発行日 1954年1月10日
Published Date 1954/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200664
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正月の餅と協同生活
今から90年も前頃,日本人の8割までが農村生活を営んでいました.そしてそれらの人達は田畑を耕やし野菜を作り,草や杉皮ぶきの家に住み,山のふもと谷川ぞい盆地のあなたこなたに全く自給自足の生活をしていたのです.
そうした村ずまいに暮がやつて来ると人々は正月の支度を始めます.まず新年の食物を煮る木の薪を伐りに山に入ります.これを年木伐りとか節木伐りといつたそうです.次いで正月餅をつくのです.これは節米搗きと呼ばれました.ふだんは屑米や雜殻を木の葉やざつぱを燃して炊いていても,せめて正月くらいはよい薪で白い餅をついて年をとろうというわけです.又ふだんは魚にありつけないような不便な村でも又貧しい家でも田作り(ごまめ)程の小さい魚でもなまぐさものを何か用意して,人蔘やごぼうのあま味のよい野菜も用意したわけです.
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