映画
巴里の空の下セイヌは流る
X
pp.40
発行日 1952年9月10日
Published Date 1952/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200359
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殺人狂で,最後に警官隊にうち殺される彫刻家マティアス。なんども医学試験に失敗するが,偶然の機会に怪我人の手術に成功して一人前の医師となる内気なフオレステイエ。フオレステイエの愛人で,パトロンの誘惑をしりぞける写真モデルのマリイ・テレエズ。マリイの友達で,田舎から彼女をたよつて出て来,宝くじに当りながらその日のうちに殺人狂に殺されるドニイズ。銀婚式のお視いに家族とピクニックを計画しながら工場のストライキでひきとめられようやくいそいそ帰る途中で撃たれてしまう職工のエルムノオ。飼猫の餌を求めて歩く屋根裏部屋に住む貧しい老嬢ペリエ。学校の不成績を親に叱られて家に帰れず巴里をさまよい歩く少女コレットーの七つの挿話を集めている。しかもこれらはパリーの1日の出来事である。ジユリアン・デュヴィヴィェ得意のエピソオド映画である。
「巴里の空の下セイヌは流る」—この映画は巴里を背景として,そこに生活する人々の喜びと悲しみを通じて人間の運命を描いた一篇の抒情詩である。七つのエピソオドは次次に結びついて行つている。ジユビイビイエの手法のさえは「我等の仲間」「運命の饗宴」「舞踊会の手帖」のようにすきのない織物のような美しさを発揮している。巴里を主人公とした一つのシヤンソンであるとも言うべきであり,デニヴィヴィニの戦前の傑作に劣らぬすばらしい成功とされている。新人俳優だけを出演させているのも戦後の彼の傾向を物語るもの。
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