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保健婦と社会保險
吉田 壽三郞
1
1国立公衆衞生院衞生行政部
pp.34-37
発行日 1952年4月10日
Published Date 1952/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200265
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社会進歩の道程に立ち塞がる欠乏・疾病・無智・不潔・無情という5ツの怪物と戰うために,国家は個々の国民と相協力してゆく責任があるとイギリスの社会保障制度の立案者であるウイリアム・ビヴアリツジは言つている。第二次世界大戰によつて勝利者となつた英国においてすらこれら怪物の重圧に惱されている。まして敗残者であり,天然資源に乏しい狹少の土地にひしめきある過剰人口をかかえているこの国においてはその新憲法において,国民の健康で文化的な国民生活の保障を約束したとはいうものの国家はとかくこの5ツの怪物の猛威の前にひるみ勝ちである。その上,国際情勢は微力なこの国としても独立をささえるために最低限度の防衞軍事力を保持する様に要請しているのである。
医療を含む広範の公衆衞生の第一線に日夜肝肌を碎いている保健婦姉妹にとつては,これら怪物の猛威は事象にあたつて直接その肌に感じておられるところでしよう。この国の如き嚴しい環境の間にあつては,社会事業や教育事業に立働こうとしておられる方々は,人道主義と理想主義とに燃えて,自己を犠牲にして仕事の発展の為に打込んでおられることと想います。それだけにとかく惨めな規状に接して,その嘆きは大きいことでしよう。
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