連載 高齢化社会の福祉と医療を考える・40(最終回)
ケアのために守るべきもの
木下 康仁
1,2
1立教大学社会学部
2(財)日本老人福祉財団
pp.1236-1239
発行日 1989年12月1日
Published Date 1989/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922436
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居住者からケア職員に投げられた重いボール
心身が衰え自宅での生活が困難になった老人たちが居住するあるケア施設で,次のような問題が発生したことがあった.ベッドのすぐ横にある自分のキャビネットの引き出しからお金がなくなるという相談が,1人の女性入居者から寄せられたのである.相談を受けたのは,彼女のケアプランを担当しているチームのリーダー(男性ヘルパー)で,彼女が最も信頼していた職員である.
相談の要旨は以下のようであった.この女性は過去4か月程,歯の治療のため近くの歯科に職員に付き添われつつ通院しており,受診予約日の少し前に1万円から2万円を自分の口座からおろしていた.この老人ケア施設には週に2度,銀行の出張サービスがあったので,彼女は自分の希望通りにお金を出し入れし,自分で金銭管理をしていた.
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