連載 高齢化社会の福祉と医療を考える・13
老人の「問題行動」「わがまま」を考える[1]
木下 康仁
1
1立教大学社会学部
pp.904-907
発行日 1987年9月1日
Published Date 1987/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921811
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「問題行動」の問題点
老人ホームや老人病院などでよく使われている言葉に「問題行動」というのがある.問題行動とは,現場の職員によって「問題」であると判断される老人たちの行動をひとまとめにした言い方であるから,これは一種のカテゴリー用語である.その人間が何者であるかを社会的に規定しかねない非常に怖い概念装置なのだが,「問題行動」という言葉の持つこうした本質について私たちは随分鈍感になっているのではないか.
問題とされる行動に具体的にどのようなものが含まれるかは,老人ホームなり老人病院によって,また同じ場所であっても職員(例えば看護婦とヘルパー)によって違いがあると思われるが,一般には老人に特有とされる病理的行動に落ち着くであろう.思いつくままに挙げてみると,乱暴・暴力行為,不潔行為,俳徊,夜間せん妄,盗難被害妄想,好訴行為,性的行為などに始まり,自分の名前を忘れる,居室を間違える,家族や職員を忘れるといったことが続くであろう.
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