特集 患者になって気づく—看護婦が看護される時
癌と闘う患者となって
深川 理和子
1
1社会保険佐賀病院
pp.568-571
発行日 1987年6月1日
Published Date 1987/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921737
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忘れもしません.その日,昭和60年3月24日.私は夫の父の十三回忌の準備のため,朝早くから,白い割烹着で台所で働いていました.突然襲った右下腹部痛に,生理かなと思いました.ところがどうも痛みが強すぎます.足の方まで引きつるように痛みます.私はとうとう台所にうずくまってしまいました.
4歳の次女が呼んでいます.「お母ちゃん,ごはん,ごはん」「お父さんを早く呼んできて」うめくように言うと,次女はやっとおかしいと思ったのか,2階へ走って知らせに行きました.駆け降りてきた夫は,私を車に乗せると,私の勤務先である社会保険病院へ連れて行きました.日曜日の早朝は人も車も通らず,通い慣れた道なのにとても長い距離に思えました.その日の当直医は顔見知りの外科医で,夜勤婦長は私の勤務場所の婦長でした.
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