2色ページ 性格の異常・5
‘異常’の成り立ちについて(3)
浜田 晋
1
1浜田クリニック
pp.890-892
発行日 1974年8月1日
Published Date 1974/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917084
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脳手術をうけた患者の異常性の成り立ち
ある日,私は脳腫瘍の手術をうけて3か月たった29歳の男と出会いました.リハビリテーション施設の診察室.彼は歩行障害と運動失調の運動療法のためにそこに通っていましたが,初めから反抗的・拒絶的でPTやOTがもてあまし,精神科医の面接を求めてきたものです.
診察室でも,彼は極端に頭を下げ前こごみの姿勢で,両手をきちんと膝の上にそろえてかしこまっていますが,ほとんど自分からは口を利かず,じっとしています.話しかけると,過度に礼儀正しく恐縮し,女性的な物腰でねばっこくしやべります.陰気で,若者らしい生気は全く乏しく,受動的です.話もまとまりが悪く要領を得ず,‘軽いながら脳手術後の人格水準低下が認められる’と,私は判断し,とても以前この人がついていた知的な仕事には復帰できないだろうと見通しをたてました.当時のカルテには‘器質性の性格変化が中等度’と記載されています.
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