2色ページ 人間発達学入門・2
生物としての赤ちゃん
上田 礼子
1
1東京大学医学部保健学科母子保健学教室
pp.1172-1175
発行日 1973年9月1日
Published Date 1973/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916758
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
人間の赤ちゃんの特徴
人間は動物の一種なので,生物,動物の世界に存在する自然の法則からのがれることのできない運命にある.ここでは人間の赤ちゃんが,他の動物の子どもに比較してどのような特徴をもっているのかについて述べてみたい.
まず,いろいろな動物について,出生時にその大人と同じ能力をどの程度備えているかについて比較してみると,大まかに2つの極に分けられるという.一方の極に属するものは,離巣性の動物といわれ,出生後まもなく大人と同程度の能力をもっているものである.たとえば,哺乳類では,ウマ・ゾウ・ウシ・キリン,鳥類では,ニワトリ・カモ・シギなどであるが,ウマは出生後,数時間経たないうちに母ウマから離れて自由に動きまわるというぐあいである.他方の極に属するものは留巣性のものであり,出生時に感覚器官は機能しておらず,運動能力も未熟で親の保護なしには生存できない動物たちである.たとえば,ウサギ・リスなどがそれである.このような離巣性と留巣性との間にはもちろんいろいろな段階のものはみられるのであるが,動物の種類によってその型が決まっている.
Copyright © 1973, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.