グラフ 看護の跡をたずねて・4
台北の保安宮
石原 明
1
1横浜市立大
pp.76
発行日 1967年9月1日
Published Date 1967/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913285
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中華民国の臨時首都,台北(タイペー)市街の西北よりに孔子をまつった孔子廟(コンツミャオ)がある。純中国風の豪華広壮の建築物で,境内も広いが,行事のない平日は観光客が時折訪れるくらい。現地の人の参拝する姿をほとんどみかけない。ところがこの孔子廟のすぐ隣りにある保安宮(ポアンコン)は大賑わいで,参拝する人があとを絶たない。
対照的なこの相違は何によるのだろう。日本人の観光客は孔子廟には寄っても,保安宮に行く人は少ない。同じような中国風の宮殿建築でありながら零囲気が全く違っていて,何となく神秘的で薄気味が悪い。この原因は儒教と道教の差からきている。孔子の説いたおしえは儒教といっても宗教ではなくて人の守るべき道徳なのだ。怪力乱神(スリラー,力量自慢,背徳のスキャンダル,神秘なミステリー)を語らず,鬼神を敬して遠ざけた孔子ではあまりにも現実のご利益がうすい。学者はともかく庶民にはなじめない。
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