海外の看護
イスタンブール(トルコ)を訪ねて
塚本 蝶子
1
1病院管理研究所
pp.85-89
発行日 1963年5月1日
Published Date 1963/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911936
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口東洋のはじまり口
誰から聞いたかは思い出せないけれども,「西ヨーロッパの国々を旅行して,ギリシャを最後に,トルコのイスタンブールにはいると,そこから東洋がはじまるのが,じつにハッキリわかる」ということばがある。これ以上の適確な表現をもつことばを,他に置きかえられないことをしみじみと感じさせる。東洋のはじまりの町についたのは,7月の4日の夜,昭和35年である。夕立ちでも通ったのか,飛行場一面がすっかりぬれて,アテネでの乾ぎきった暑さもなく,空気がおだやかで,しっとりとしていた。
ひとつの国にしばらく滞在し,そこでの民俗や習慣になじんだ頃,再び次の国に旅をすすめるという生活が長くつづくと,身体全体で,新しい国の,人の,社会の様子を感知するという神経が異常に訓練されてくるものである。私のトルコ入りも,イスタンブールの空港に降りたった瞬間から,西欧文化のにおいをはなれた,何か,もっと遠い,そして,日本人の自分に,何か近しい,それでいて,異質なような印象に包まれたのである。
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