——
「仙台市立病院における看護業務タイムスタデイ」についての一考察(本誌第25巻第7号に所載)
塚本 蝶子
1
1病院管理研究所
pp.18-22
発行日 1961年12月15日
Published Date 1961/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911522
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
一考察という態度
ある日の朝日新聞1)に石川達三が,自分の小説を批評する人が話の要約を1冊の本から3行ぐらいまとめ,そして評価をすることにはげしい批難を書いていた。数カ月にわたつて考えに考え,練りに練り自分の精神のすべてを注ぎ込んだ小説が,批評家の2,3時間の労力で,しかも数百頁のものが3行に表現されて,読者層にある一定の概念を与えてしまうという事の不合理性を突いたものであつた。編集の方からこのNursing Studyへ私の意見を書いてもらえまいかという依頼を受けたとき,私は,フト,このことを思い出して,とんでもないと思つた。意見を書くということは,私自身が,この調査についてどういう評価をするかを述べることであるからである。そして考えた。私なりに,この調査に対する解釈を自由にかつ建設的にまとめることによつて,この調査が提供する問題点を最大に自分自身が学びとる機会を得るのであつたら,むしろ,喜んでその努力を払うべきなのではないか,と。そしてさらに,この機会を通して将来この種の調査がより効果的になされ,看読業務の問題解決の糸口となり得るように,自分なりの働きかけができるように,ここで自分が勉強をしてみるのも,現在の職場からいつて妥当なのではないかと感ずるのだつた。そういう自分の考えを明らかにしたとき,私はこの貴重な資料の解釈と検討に,一考察という態度をもつてあたることにじゆうぶんな意味を認めたのである。
Copyright © 1961, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.