読者文芸欄
詩
春日 小百合
1
,
高橋 美枝子
2
,
安部 美恵
3
,
牛尾 千歳
4
,
長谷川 泉
1国立浜田病院附属高等看護学院
2田中医院
3日本鋼管病院
4東京都西巣鴨
pp.26-27
発行日 1961年4月15日
Published Date 1961/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911309
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明日と私のこころ
冬風が,鋭いうなり声をあげ道を進む私をおびやかしたとて明日を信ずる私の心になんの恐怖があろうたれ下つた灰色の雲間より冷い白いものが落ちやがて積つて行くように明日の幸せは一つ一つの小さいものから積つて行くやがて,それが消えたときにも私は悲しむまい夜が無ければ朝がないように不幸がなければ幸せはないのだから春風が,こびる如き声でわたしの心の隙間に話かけたとて明日を歩む私の心になんの動揺が見られよう花々が咲きそろつた美しさをほめるより冬のきびしさと斗い抜いたその青い芽を見つめようやがて,花々が散つたときにもわたしはおしむまい一つの種が多くの実を結ぶように一人の人の正しさが多くの人に幸せを与えることを知ろう夏風が,乾燥しきつた熱風を疲れ切つた私の肉体にそそぎこんだとて明日のために汗を流す私の心になんのあせりがあろうやけつくす如き太陽のもとで年えたニコヨン達がモクモクと汗を流し,明日を信じていることを私は知つている秋風がいじわるくとがつた声で私の過去の道程をあばいたとて明日への精神にいどむ私の心になんの後悔と恥辱があろう見よ私は今荒涼たる原野につつ立つているそこに自我の世界と斗う日々苦悶する自己を見る私の少数の愛する人達よもつと,もつと私の深いところを見つめてくれないか
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