講座
精神病院における生活指導(下)—≪慢性患者に対する一年間の指導を通じて≫
吉岡 真二
1
,
矢島 金蔵
2
1東京都立松沢病院
2東京都立松沢病院病棟
pp.27-31
発行日 1959年8月15日
Published Date 1959/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910905
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5)治療としての生活指導
つぎに,これまで述べてきた一年間の経験を通じて,われわれがお互いに話し合つたことをいくつかまとめて述べてみたいと思います。
精神科では他の各科と異つて治療そのものに大きな特色があり,インシュリン・ショック,電気ショック,薬物投与などの身体的治療だけが治療ではなく,その他に精神療法,作業療法といつた基本的な治療があります。ことに慢性患者では多くの場合,身体的治療も大きな効果を期待できなくなりがちですから,この特色はもつと強調されてよいと思います。しかしわが国での実状としては,やはり身体的治療にのみ重点がおかれがちですし,またこれが極端になりますと,身体的治療の効果が余り上らないような場合には,治療しようという意欲が非常に弱くなつてくる傾向がみられます。いいかえますと,精神病は治らないどうしようもないといつた,治療に対する消極的な態度がいつか支配的になつてくるのです。しかしこれを患者の側から考えてみるとどうでしようか。
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