扉
生命のほとばしり
pp.4
発行日 1959年7月15日
Published Date 1959/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910881
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今回もどつてきた「松方コレクシヨン」はそのいずれもが1つ1つ素晴しいものであるとはいずれの新聞にも報導されていますし,また一部の写真紹介をみても,容易にうなずけるところです。なかでも圧巻といえるものは,オーギュスト・ロダンの彫刻であるといわれています。彫刻の彫の字もわからない私でも,ロダンの名前は知つていますし,ロダンといえばすぐ「考える人」と「接吻」を頭にうかべます。そういう作品ばかりが50点も揃つているときくだけでも,1日も早く公開されることがまち遠しい思いです。
美しい体の線,流動する肉付けなど,その弾力にとんださまざまな変化は,ロダンの至芸といえるといわれます。そして,ロダンの彫刻は単にその技術のすぐれているいわゆる上さきだけではないので,彼は常に「彫刻に独創はいらない,生命がいるのだ」といつていたということです。そういわれてみると,報道された一部の作品の写真,ことに私の好む「接吻」のそれをみてみると,新鮮なポーズや,何ともいえない心をひかれる魅力をこえて,はつらつとした生命のほとばしりを感ずることができます。じいつとみつめていると,2人の呼吸が感じられ,胸の波打ちがみえてくるようで,こつちも思わず息をつめ,胸をときめかしてしまうくらいにひきこまれていく,それほど生々しいものを感じます。
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