特集 知つておきたい麻酔のすべて
麻酔中の合併症や事故とその対策
山本 亨
pp.103-126
発行日 1957年4月15日
Published Date 1957/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910322
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麻酔がまだ今の様に発展していなかつた頃には手術中に,麻酔そのものによる事故や死がしばしば見られた。近頃麻酔の方法が復雑になりたくさんの薬が使われる様になつて来たのでその合併症や事故も一段と種類が多くなつた。又麻酔が発達したので手術を受ける患者の年令の範囲が下は生後1日目,上は60歳以上という様に大変広くなり,又前には危いからといつて手術を行わなかつた様な悪い状態の患者も外科の対照になる様になつたためその数も非常に増して来た。
麻酔をかけるというのは単に患者を眠らせたり痛みを止めたりするだけの仕事ではなく,予めよく患者の体質や状態を知り,それに外科医の要求も加えて,手術に一番合つた方法で患者に一番よい薬を用いて痛みを除くと同時に患者のいのちを守る事なのだから麻酔医は麻酔のテクニツクだけでなく,起りうるあらゆる合併症や事故の原因,症状及び対策についてよく知つていなければならない。麻酔中に何か事故があるとそれを患者の特異体質とか解剖学的な異常だとか,器械や薬品の責任にするのは麻酔者の態度として卑怯だと言わねばならない。
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