2頁のちしき
はしかのワクチン
荒川 清二
1
1東大
pp.28-29
発行日 1955年3月15日
Published Date 1955/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909768
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昔から疱瘡は品さだめ,はしかは命さだめといわれ,ほうそうと麻疹は古来一番怖れられた伝染病であつたようである。しかし疱瘡はゼンナー以来の種痘法で腕にわずかのアバタですむようになり,最近では矢追博士の精製痘苗による皮下種痘でそれも無用となつて了つた。(オーストリーでは矢追博士の仕事などを基にして,この皮下種痘を既に法文化している。)処がはしかの方は依然として昔のまゝに取り遺されている。交通が頻繁になつて,淫浸度が高くなつたり,今や小児の伝染病となり,その死亡率も往昔ほどではないが,昭和27年の乳幼児の死因中4〜5位を占めているし,これが誘因となつて結核,百日咳への抵抗力が著しく低下するのを考えると矢張り怖るべき病気の一つである。しかもヂフテリーや百日咳などは近来予防液が実用の域に立ち到つた処からすると,はしかは些か立ち遅れた感があつた。これははしか疱瘡を同じくウイルス性の病気であるのに実験動物に感染させることが疱瘡と違つてむずかしかつた為,これに基いてワクチンその他の研究を根柢から築きあげることは殆んど不可能であつたからといえよう。
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