医学のあゆみ・28
冬眠手術—低体温手術
杉 靖三郞
pp.23
発行日 1954年1月15日
Published Date 1954/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909488
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最近,低体温手術というのが,フランスやドイツではやり出している。これは人の体温をの37℃平熱以下にさげて,ちようど動物の“冬眠”のような状態にさせて,手術する方法である。
これをはじめたのは,フランスのラボリーとユーゲナル(H.Laborit,P.Hugenard)である。強会遮断劑(遮断カクテル)をもちいて身体を冷やし体温35〜32°にして,冬眠状態をおこさせると痛みを感じないだけでなく,手術の経過がひじようにはやく,術中術後に苦痛がない,というのである。体温を下げるのになぜ,このようなカクテルを使うかといえば,人体の一部または全体に寒冷を作用させると,反射的に体がぶるつとふるえて,筋肉にケイレンがおこり新陳代謝が高まつて,体温は元にかえろうとする。これは,脳の中枢から来ている神経の反射によるものであるから,あらかじめ,この自律神経の端を遮断しておくのである。
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