発行日 1951年12月15日
Published Date 1951/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906987
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講和後,自立した日本の生活は一體どんな工合になるかということは,吾々一人残らずが心配になる問題である。終戰後年々私達の生活は良くなつて來ていることは事實である。しかしこれにはアメリカの占領地援助という大きな力があずかつて居たし,賠償,外債の償還等が,すべておあずけのままになつて居たこととて,今後獨立した日本でこの状態が續けられるものではない。私達は借金を返して行かなければならないことは當然である。一方國内では戰爭犠牲者も何とか國民全體で援護の手をさしのべてあげなければなるまい。こう考えて來るとこれ等すべてが税負擔にかかつて來るものと覺悟しなければならない。これに軍備のことも併せ考えると,切角今政府がいつている減税も,掛聲に了つてむしろ増税の心配さえ起つて來るのである。
一方に人口問題がある。狭くなつた國土の中で毎年々々非常な人口増産(人口白書によれば,年に130萬人づつも増加しているという)の現状から推して,このままで行つたら生活難はもつときびしくなるであろうと思われる。では日本國民の生活水準はいきおい降るかといわれるが,私達は何としても切角ここまで高めた水準はせめて保持して行きたいのである。ここで私達は政治家に善處を望むのみでなく,國民の一人一人がよほどの覺悟をもつて,毎日の衣食住に工夫をこらし,無駄を排除し,新しく資源を活かしてゆくことを考えなければならないと思う。
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