名詩鑑賞
朱の小箱—室生犀星
長谷川 泉
pp.52-53
発行日 1951年4月15日
Published Date 1951/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906841
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日本の詩人の大多數は抒情詩人であるが,それらの抒情詩人のなかで室生犀星は一種獨自の地位を占めている。かれの詩のなかにはひらめくよ5なインテリジエンスは感じられない。しかしながら,犀星の詩に對するときはほつと安堵しでくつろげるようなあたたかいアツト・ホームな雰圍氣を感ずるのである。それが犀星の詩に盛られている抒情性の效果であり,また特色でもある。
犀星はとりあげるような學歴をもたない。むしろ落第坊主であり,學校での成績は極めて不良であつた。そのことは,しかし,かれが自らの特色とする豊な感性に對するマニアのような信頼となつて昇華したと見ることができる。かれは自己の感性以外のものを信じない。犀星特有の抒情性はそこからうまれ出る。
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