発行日 1948年8月15日
Published Date 1948/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906362
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
5.看護に興味をおぼへた動機について
1.京都市立第一高等小學校に學んだのは僅か2ヶ年足らずでありましたが,此の2ヶ年は實になつゑに取つては一生の基盤をなすところの大切な大切な期間でありました。と申しますのはその間古今の文化の粹を集めた京都の町の内外を歩けるだけ歩いたと云ふことでありますそして出來るだけの知識を得たと云ふことであります。即ち或る時は鎌倉物語の梶原佐々木の先陣爭ひで有名なあの宇治川を中心として,國寶宇冶の平等院の木像を見たり,黄檗山に,開祖隱元禪師の足趾をしのび乍ら茶摘乙女の活動振りに興をおぼへたりいたしました。又茶の湯の心得がないと,訪ねられないと云はれた金閣寺,銀閣寺を參觀して室町幕府時代の人心を想像したり,或は櫻の頃ともなれば,丸山公園に,嵐山にと遊び,一方京極南座等に出される京都特有の「都踊」に春の和やかさを味はつたのでありました。
又近所に,つづれや錦の帶地を織つて居つた西陣織物屋があつたので,よく遊びに行つて「はた」を見せてもらつたものでありますがそれと同時に袋物になる小さい端切れ布をもらつて來て,いろいろ工夫することもたのしいことの一つでありました。
Copyright © 1948, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.